グループCFOメッセージ
持続的成長に向けた課題認識
サトーが将来にわたり安定的に価値を創出し続けるためには、継続的にイノベーションを生み出せる組織であり続けることが不可欠です。サトーにとってのイノベーションとは、人・モノ・情報の流れを再設計し、現場から産業の仕事の仕組みを変革することにあります。1962年には携帯式値付け機ハンドラベラーを発明、製造・販売を開始し、1981年に熱転写方式バーコードプリンターを発売した際には、小売・物流の現場に新たな標準をもたらしました。
そのDNAを継承すべく、中期経営計画では「Perfect and Unique Tagging(PUT)」を、次のイノベーション創出の中核テーマとして位置付けています。PUTは個品単位の情報管理を社会へ広げることで新たな価値創出をめざす長期的な取り組みです。短期で成果が顕在化するものではなく、実証を重ねながら社会実装の精度を高めていく必要があり、その実現には挑戦を支える強固な財務基盤と経営管理体制が不可欠です。
また、グローバルでの事業運営には、各地域における事業機会の取り込みと同時に、マネジメント負荷やガバナンス上のリスクへの対応も求められます。持続的な成長を実現するためには、適切な経営規模を維持しつつ、グループ全体で意思決定の質とスピードを高めていくことが重要です。財務とガバナンスの両面から経営基盤を整備し、長期的な成長を支える土台を一層強固なものとしていきます。
財務・ガバナンス基盤の強化
当社が中期的な成長を実現するためには、事業の基盤となるキャッシュ創出力の強化が不可欠です。ROIC経営を財務戦略の中核に据え、営業利益の拡大と投下資本効率の向上の両面から、経営の質を高めていきます。営業利益を重視する考え方は着実に浸透してきましたが、投下資本に対する意識については、なお一段の向上余地があると認識しています。中でもキャッシュ・コンバージョン・サイクル(仕入代金の支払いから売上代金の回収までの日数)の改善は重点課題であり、特にDIO(棚卸資産回転日数)には依然として改善余地があります。商品ラインアップの最適化や需要予測の精緻化など、具体的な施策を着実に進め、創出したキャッシュを成長領域へ適切に再配分することで、資本効率の向上と事業ポートフォリオの高度化を図っていきます。
資本配分(2025年度~2028年度)
これらの取り組みをグローバルで実効性高く推進するため、2026年4月から米州・欧州・アジアパシフィックに地域CFOを配置し、DIO、DSO(売掛金回収日数)、DPO(買掛金支払日数)を共通KPIとしてグローバルにモニタリングする体制を整えました。また、FP&A※1、財務の両機能の強化をめざし、財務企画部を発足させています。現地の課題に即した改善を加速するとともに、本社との連携を強化し、財務ガバナンスの実効性を高めていきます。
加えて、ガバナンス強化を組織的に実行すべく、ファイナンス・法務・ガバナンス推進・総務の各機能をCFO直下に統合し、経営管理本部として横断的に運営する体制へ再編しました。各機能が連携しながら、制度構築と運営を一体的に進めることで、投資判断やリスク管理において、迅速かつ一貫性のある意思決定を可能にしています。加えて、成長投資においては投資後のフォローアップが重要であるとの認識のもと、デシジョンサポート部を新設しました。投資案件の進捗を継続的にモニタリングし、必要に応じて軌道修正や投資判断の見直しを行うことで、投資規律の強化につなげていきます。さらに、経理を含む各種プロセスの一層の可視化に向けたデジタルツール導入も進め、関係部門が状況を適時に共有できる環境を整備することで、管理水準と意思決定品質の向上を図ります。
2025年度に計上した業務システムリプレイスに係る約13億円の減損損失は、当社の投資管理の課題を示すものと認識しています。本事案を重く受け止め、再発防止にとどまらず、投資規律とけん制機能の強化を徹底していきます。
資金管理においては、グループ全体最適の観点から資金の集中管理を基本方針としています。資金効率の最大化と財務リスクの低減を両立させることが、グローバル経営基盤の安定性を高める上で重要です。
加えて、資金調達手段の多様化を図るため、日本格付研究所(JCR)による信用格付けの再取得に取り組み、従来のBBB+からA-への改善を実現しました。これにより、資本市場へのアクセス強化と安定的な資金調達基盤の構築に加え、エクイティにとどまらずデットマーケットの視点からの評価を得ることで、当社の財務基盤および信用力に対する外部からの客観的な理解を一層高めていきます。PBR1倍を安定的に上回れていない現状については、当社の成長性および資本効率に対する市場評価が、なお十分には高まっていない結果であると認識しています。
今後は、資本効率の改善と成長投資の着実な実行により、資本市場との対話を通じて、当社の取り組みへの理解と信頼を高めていきます。なお、2024年に導入した累進配当方針は、長期的な利益成長と安定的な株主還元に対する当社のコミットメントを示すものです。
キャッシュ創出力とガバナンスを着実に強化し、投資家の皆さまから信頼される企業をめざしていきます。
配当の推移
株式会社サトー 上席執行役員 グループCFO
経営管理本部長 コンプライアンス担当
益子 統